純白のシーツはブラックライトの妖しげな光を浴びて、まるで満月に照らされた湖面のように幻想的な輝きを放っていた。
その湖上には引き締まった四肢をスラリと伸ばした女体が一艘、艶めかしく浮かんでいる。
指先が彼女に触れると、湖面を波紋が広がっていくように、身体が揺らめいた。
小さな波は重なりあい、やがて大きなうねりとなって彼女を飲み込んでいった・・・
ホテルのお部屋で彼女に対面したときは、とてもクールな印象を受けたのを覚えている。
歳は30代半ば、整った顔立ちだが緊張のせいか表情は固く、ただ興味本位の依頼ではないことを予感させた。
二人はソファに腰掛け、張り詰めた空気の中カウンセリングを始めた。
彼女は背筋をピンと伸ばし、長い足をしっかりと組んで依頼の経緯を簡潔に語ってくれた。
かいつまんで言うと、「セックスを楽しめない」というのが彼女のお悩みである。
不感症ほどではないにせよ、どうしてもセックスに没頭できず、オーガズムの経験もないそうだ。
現在もパートナーがいるが、義務的な行為として定期的に肌を重ねているという。
そんなお悩みを持っているようには見えないが、常に鎧を着ているような、気軽には接しにくい雰囲気は確かにあった。
これは一度の施術で解決できるような問題では無いような気がしていた。
こういったケースでは性格的な要因も大きく、彼女の場合は何か原因があって堅く心の扉を閉じているように思えたからだ。
しかしセラピーを開始すると、それは単なる色眼鏡に過ぎなかったとわかった・・・
ベッドの上でうつ伏せる彼女の背中をガウンの上から触れ、眠っている性感脳に囁きかけるように微弱な刺激を伝えていった。
お尻の辺りを撫でると、彼女の口元から小さく溜息が漏れたような気がした。
正直、その反応は意外だった。
僕はてっきり、無反応もしくはくすがったがる反応が返ってくるだろうと思っていたからだ。
もしかすると彼女は、男性からこうやって愛撫されることを心の奥深くで欲していたのかもしれない。
性感に関するお悩みは絡まりあった糸のように複雑だが、それを解く糸口を見つけたような気がした。
ガウンの紐をほどき、うやうやしくベールを脱がしていく。
あらわになった女体の上に指先をゆっくりと滑らせていった。
「う・・・うぅん・・・」身体を覆う一枚の皮膚にも、たくさんの性感帯が隠されている。
そこに触れるたびに、甘い吐息が静かに部屋に響きわたる。
愛撫の指先が全身をくまなく進んでいくと、こころに着込んだ鎧をひとつずつ脱ぎ捨てていくように、彼女の性感脳は少しずつ花開いていった。
気がつけば彼女は一人の女性として、ただ快感に身をまかせていた。
性感開発の下地が整った後は、『究極の乳首責め』、『レインボー・クンニリングス』、『膣マッサージ』へとつづき、徐々に強い快感を与えていった。
一度開放された肉体は、思う存分”性愛の遊戯”を愉しみ、最後には
カーマ・ジュニアで
初イキ&
中イキをしてしまった・・・
「実はわたし、ずっと胸が小さいのがコンプレックスだったんです・・・」セラピー後に彼女はぽつりとそう言いました。
これまでのパートナーとのセックスでは、恥ずかしさが消えずに快感に没頭できなかったそうです。
他人はそこまで気にしないものですが、燻ったコンプレックスは人生の足かせとなります。
性感開発においては、一切の雑音(ノイズ)を取り去り、ただひたすら快感に身を委ねることが重要になってきますが、その中でも、自身の体へのコンプレックスというのは意外とみなさんお持ちかと思います。
パートナーの軽率な言葉で傷ついた人もいます。
今回はたまたま僕という”あかの他人”が相手だったから、気負わずに自分を解放できたのかもしれません。
せめてベッドの上では、僕とのセラピー中はありのままの自分でいてください。
僭越ながら、それが今日の日記でお伝えしたかったメッセージです。
みなさん一人ひとりが、かけがえのない一輪の華なのですから。